堀専
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Pursuit Fruition
とまっしゅ!(挨拶

Pinkペプシの追加補充に行ったら面白いものを発見

トマト炭酸…だと?
と・まーと

トマトジュースに炭酸を入れただけみたいな乱暴な味を想像していたけど、予想外の飲みやすさ。野菜飲料が得意でない自分でもこれならいける('ω`)



まぁ割とどーでもいい事はさておき、
またホライズンさんからSSを頂いたのでご紹介

結城千種 vs 渡辺智美

以前頂いたお話の続きとのこと
本編は続きを読むからどうぞー

日が落ち、薄暗くなったジムの一室で、一人居残りのトレーニングを終えた結城千種は、ある想いに苛まれていた。

忘れもしない・・・いや、忘れられない『あの日』の感覚が千種を捉え続けている。
ただ一度目にした映像・・・ダルマ式ジャーマンスープレックスで沈んだ自分自身の姿が、一年以上経った現在も脳裏から焼き付き離れなかった。

そして『あの日』を境に、極度のスランプに陥った千種は、タイトルの懸かった試合に悉く敗れ、今日まで積み上げた地位も名誉も失った。
更に身に刻まれたトラウマから、彼女の宝刀であるスープレックスを放つ事に、無意識のうちに躊躇するようになり、幾度もファンを沸かせた剛と美を兼ね備えた人間橋は、過去の産物に成り下がってしまっていた。

気が付けば世界に名を轟かせた『スープレックス・プリンセス』の面影は消え去り、創設一年足らずの新興団体へ移籍していた。
表向きの理由は、現団体の社長から熱心に懇願されたから・・・だが本音はプレッシャーが殆ど掛からない場所へ、逃避したかったに過ぎなかった。
移籍から一ヶ月が経つが、過去の栄光と挫折に踏ん切りが付けられず、未だに精細を欠く日々をすごしている。
まるで錆付き止ってしまった歯車の様に・・・。

「・・・・・・(練習していれば、少しは気が晴れると思ったけど・・・)」
悲観的な気持ちを拭えない自身に嫌気が差した千種は、大きく溜息をつき帰り支度を始めた。
するとドアが開く音がし、廊下をパタパタと歩く音が近づいてくる。

「いや~、暑い!マジであっついわ~!お、千種イイモノ持ってるじゃん♪」
「あ・・・はい、よろしければどうぞ・・・」

入って来るなり甲高い声で一気に捲くし立てると、目ざとく見つけたスポーツドリンクを千種から受け取り一気に飲み干した。

「・・・・・・ぷっは~~生き返るぅ~!やっぱ暑い中ランニングした後の一杯は格別だね~」

声の主の名は渡辺智美
千種より年上の先輩レスラーであり、この団体の創設時に彼女もまた、他団体から移籍してきた一人であった。
『デビュー最速100敗』『最多連敗』の悲惨な記録の加え『本業=イベント 副業=プロレス』『イベントの女王様』なるプロレスラーとしては、不名誉なキャッチフレーズを貰い受けた過去のある人物である。

しかし移籍してからは、何の気まぐれかマイペースながらも、真摯にプロレスに取り組む様になり、以前の彼女からは考えられない成長を見せていた。
オープン且つ面倒見の良い性格もあり、団体では数少ないプロ経験者であった智美の存在は、移籍して間もない千種にとって良き先輩であり、話相手でもあった。

「あ、あの・・・今日はランニングして、そのまま寮に帰るんじゃ・・・」

怪訝な表情で千種が尋ねる。

「ん?あぁ、ちょいとばかり忘れ物をね~」

空になったペットボトルを左右に振りながら、智美は思わせぶりな笑みを浮かべ答えた。

「そうですか・・・じゃあ私はこれで。お先に失礼します」

『今は独りでいたい』
千種は智美に一礼すると、足早にその場を立ち去ろうとした。

「・・・・・・もう一ヶ月も経つけどさ、いつまでショボくれてんの?」
「・・・え・・・?」

智美の一言に、ビクッと肩を震わせ振り返る千種。

「いやね、国内トップクラスのエースさんが、いつまでも女々しく過去の栄光とやらに浸り続けるってのはど~かなぁってね」
「なっ!」

胸の内を見透かされた想いがした千種は、思わず声を荒げ智美を睨む。

「苛立ってるんでしょ?逃げてばかりいる情けない自分に」
「くっ・・・」

核心を突かれた千種の表情が怒りで歪んでいく。

「・・・ぶちまけたいならさ、アタシが相手してあげても良いよ」
「・・・・・・!?」

予想だにしない智美の言動に、千種の表情が驚きへと変わる。

「わ、私と智美さんじゃ階級も違うし・・・それに・・・」
「何だかんだ言って、記録尽くめの三下に負けちゃうのが怖いんだ?」

動揺する千種を遮る様に、智美が決定的な言葉を口にした。

「くっ・・・言わせておけば・・・」

千種は顔を紅潮させ、目には怒りを滲ませている。

「へぇ・・・やる気になってくれたんだ?ま、そうこなくちゃね」

怒りに震える千種を余所に、悪びれる様子もなく智美は言葉を繋ぐ。

「・・・判りました。いますぐ始めましょう」
「ちょいと待った」

練習着のままリングに入ろうとする千種を、何を思ったのか智美は静止した。

「なんですか?今更なかったなんてないですよ」

水を差された千種は、苛立ちから語気を強める。

「いやね、ガチでやりあうんだから、練習着じゃ盛り上がらないでしょ?試合と同じでリンコスでやろーよ、リンコスでさ」

苛立つ千種を無視するかの様に、智美は余裕な表情で提案する。

「何だって良いですよ、身の纏うものなんて・・・」

堪え様のない負の感情を何かにぶつけたい。
その一心であった千種は、智美の提案を受け入れ、足早にロッカールームへと向かって行った。

「ったく、面倒くさい性格だねぇ・・・ま、これで準備は整ったと」

智美は独り言を呟くと、千種の後姿を見送りながら、ダブついたロングパーカーを徐に脱ぎ捨て、リングコスチュームへと様変わりする。
その顔には悲観的な感情の欠片もなく不敵な笑みが浮かんでいた。

「・・・随分と用意周到じゃないですか。始めからそのつもりだったんですか?」

既にリングへ入りストレッチを始めている智美に、少し驚いた表情で千種が尋ねる。

「ん?・・・まぁね。って、もしかして今頃気付いた?」
「・・・・・・で、智美さんは何でこんな事を?社長に知れたら大変な事になりますよ」

智美の挑発を受け流して、千種は続け様に尋ねた。
本音ではないにせよ、闘う前に何かしらの理由を知りたかったからだ。

「あ~理由ねぇ・・・確かめてみたいのよ」
「確かめる?」
「ほら、アタシらってレスラーだから、記者とか世間からの評価ってあるじゃない」
「その評価が何ですか?」
「いやね、ポジティブな色物が、ネガティブな元エースと殆ど差がない事を、ちょっと確かめてみたいなって思ったんだよねー」

智美の理由を聞くなり千種はリングに上がる。
その表情からは理性の限界が見て取れた。

「言葉の遣り取りはもういいです・・・その体で差とやらを勝手に感じ取って下さい」
「そんじゃ始めましょ~か・・・・・・か~~~ん」

暴発寸前の千種を意に返さず、智美は笑みを浮かべ試合開始を告げる。

「手加減はしませ・・・・・・ん?」

前に踏み出そうとした千種は、智美の意外な行動に呆気にとられる。
何を血迷ったのか、智美が顔を横に向けていたのだ。

「あ」
「え?」

智美が声を出すと、それに釣られて横を見る千種。

「一体何が・・・ハッ!」

意味が判らず正面を向き直した千種の懐に、智美が飛び込んでくる。

「フッ!」
「がぅッ!」

下から上へと繰り出した智美の掌底が、千種の顎を捉え脳を揺らす。

「せやッ!」
「う゛ッ・・・がッ・・・はぁ!」

続けて狙い済ました回し蹴りが、千種の鳩尾に突き刺さる。
体をくの字に折り曲げ苦悶の表情を浮かべる千種だったが、威力が弱い分すぐさま体勢を立て直す。

「ぐ・・・不意打ちなんて・・・!」
「余所見するのが悪いっての♪それにアタシは喧嘩弱いからさ、真っ向からなんて闘わないよ?お・ひ・め・さ・ま♪」
「こ・・・のッ!」

挑発に激高した千種は、智美を捉えようとタックルを仕掛ける。
だが、乱雑なフォームのタックルなど、格好の標的に過ぎない。

「へ、楽勝~~~♪」

伸びてくる千種の腕が間合いに入るや、その腕に絡み付き一気に三角締めの体勢へもって行く。

「う゛ぇッ・・・おッ・・・あがぁ!」
「へへ、幾らなんでも、そんなのに捕まるか・・・ての!」

智美は千種の首に挟み込んだ両脚に、力を込めて絞り上げて行く。

「ぐぎゅ・・・んッ・・・あく・・・おあぁッ!」

顔が紅潮し虚ろな目になりかかった千種だったが、激しく抵抗した事により何とかロープに逃れる。

「げほッ・・・がはッ・・・そ、そんな・・・」

不意打ちを受けたとは言え、一方的に圧される展開に思わず千種は本音を漏らす。

「ま、ちょっとは強くなった自信はあるけどさ・・・根本的にはアンタが弱くなっただけでしょ?」
「くッ・・・・・・ふ・・・あはは」

智美の指摘にまた怒りを覚えた千種だったが、何を感じたのか自嘲気味に笑い始める。
確かに智美の言う事は正しい。
過去の栄光に縋り、挫折を引きずり、失った時を取り戻そうと焦り無様に喘ぐ・・・強くなるどころか、衰え弱くなるのは道理だと思った。

「いざとなると甘えて逃げて・・・卑怯者の馬鹿な私・・・もううんざりです!」
「はは、やっと理解出来たみたいじゃん」

落ち着きを取り戻した千種の表情に、智美の笑みが一瞬引きつる。

「仕切り直しです!ここからは遠慮なくいかせてもらいます!」

千種は力強く叫ぶと低い姿勢からダッシュを掛け、智美との距離を縮めようと試みる。

「ハッ、最初からそう来なさいっての・・・こりゃ智美さん、マジでやんなきゃヤバいってね!」

智美は千種の圧力に押されたかの様に、素早いバックステップで後退し、そのままロープに背を預け反発力を高めると、その勢いを利用して逆に千種に迫る。

「んじゃ!次はコレ喰らってみる!?」

千種が自らの間合いに入る一歩手前で、智美はブレーキするなり急反転し裏拳を放つ。

「そんな技・・・うんざりするほど見慣れてます!」

動きを読んでいた千種は、智美の腕を掴むと、勢いそのまま智美をロープへ走らせ、自らも追撃すべく後を追う。

「甘いよ!こちとらその手にゃ慣れてるての!」

智美は投げられた勢いを弱めようと体を捩り、右半身のみロープに預け、何とか体勢を立て直すと、迫りくる千種にヒップアタックで反撃に転ずる。

「甘いのは・・・智美さんの方です!」
「やばっ・・・あ・・・あぁぁぁぁ――――――――っぎぃッ!!」

一旦体勢を崩されてからの反撃は無謀であった。
半端強引なヒップアタックは千種に受け止められ、腰周りを固められた智美は、真っ逆さまにマットに叩きつけられ、不恰好ながらスープレックスホールドが形成される。

「・・・ッ・・・んあぁ!」

千種のホールドが甘かった事もあり、智美はカウント2のタイミングで返す。

「くッ・・・こんなに早く返されるなんて・・・」
「そんな不細工なスープレックスで・・・智美さんを落とそうなんて10年早いっての!」

悔しさを滲ませる千種に対し、敢えて余裕な表情で切り返す智美であったが、内心は違っていた。

「ち・・・(あんな半端な投げでなんつー破壊力よ・・・まだ足元が覚束ないっての)」

智美は底知れない千種の潜在能力に舌を巻きながらも、再度間合いをとり身構える。

「次こそ・・・次こそは決めてみせます!不細工だなんて絶対に言わせない!」

磨き上げた投げ技を貶された千種は、強い口調で切り返す。
だが、その瞳には怒りではなく、別の感情が宿っていた。

「はは、次はそうは行かないわよ・・・このまま簡単に勝たせたらアンタの為にならないし・・・」
「な・・・・・・?」

智美の何気なく発した一言に、一瞬気が抜けた表情を千種が見せた。

「ってぇ!なーにボサッとしてんのよ!」

その隙を見逃さず、智美が猛然と仕掛ける。

「!?・・・くっ・・・(どんな技で来ようと全て受け止めてやる!)」

我に返った千種は身構えたが、次の瞬間、自分の目を疑った。

「え・・・智美さんが消え・・・」

智美は千種の視界に入る直前にスライディングし、まんまと背後へと回り込んでいたのだ。

「晒したね・・・背中を!」
「あっ!?・・・ッぐぅえぇぇぇぇぇッ・・・・・・!」

間髪入れず絡み付く様に極まったコブラクラッチに、絞り出す様な悲鳴をあげる千種。
智美は千種を倒そうと全体重を掛けて来る。

「ッあ゛ぁぁぁぁぁッ・・・」
「くくっ・・・まだまだだね!そう言えば『あの日』も、こんな簡単に裏を・・・お!?」
「ま・・・まだ・・・だ・・・うぐおぁぁぁぁッ!」

智美の言葉に敏感に反応し、千種は倒されまいと激しく抵抗する。
その反発力に智美の体が浮き始める。

「ハッ、やっぱモノが違うってね!んじゃ、とっておき行かせてもらうよ!」

そう叫ぶなり、智美は締め上げていた腕の力を急に弱める。

「ッ・・・がはッ・・・げほッ・・・なん・・・で?」

突然満足に呼吸が出来た事が、反発力を削ぐ事態を招き、千種は一気に脱力した状態になってしまう。
狙い通りの展開となった智美は、会心の笑みを浮かべここぞとばかりに叫んだ。

「これがアタシのとっておきだよ!喰っらえぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」

智美は再度、腕に力を込め締め上げると、凄まじい勢いで千種をぶっこぬく。

「あっ・・・きゃあぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――・・・ッん・・・ぎゃうぅッ!!!」

二人以外誰もいないジムに、悲鳴と衝撃音が響き渡った。
そしてリング上には、スープレックス・プリンセスに負けず劣らずのコブラクラッチスープレックスホールド。
極めるは渡辺智美、受けるは結城千種・・・その場で目にした者以外は、誰一人信じたりしないだろう。

両脚を開き爪先に踏ん張りを利かせ、千種の腰周りを固める智美。
片や爪先をマットに付けず大開脚・・・所謂『M字開脚』の状態でホールドされ、小刻みに体を痙攣させながら、無様な姿を晒す千種。

今ここに、常識では考えられないシチュエーションが存在していた。

非常識の中の現実

「おぉ・・・ははっ・・・(ちょっ・・・あ、あの結城千種に・・・アタシが・・・)」

その視線の先にあるジムの壁に貼り付けられた大型のミラーには、今そこにある現実が鮮明に映し出されている。
表現し難い高揚感に、思わず智美は酔いしれてしまう。

無理もなかった。最下層の屈辱を知る彼女が、世界で名を馳せた雲の上の存在に・・・しかも相手が最も得手する投げ技で、会心の一撃を見舞ったのだから。
しかし、次に迫る現実が、智美を夢心地から呼び覚ました。

「あぅ・・・ぐ・・・ッあぁぁぁぁぁぁッ!」

聞き慣れた声が聞こえた刹那、ホールドは解かれ、目の前にはうつ伏せの千種がいた。

「ちぃ・・・なんて頑丈なのよ・・・ギリギリで返してくるなんて・・・」
「えへへ・・・頑丈なだけが取り柄なんで・・・それにギリギリなんかじゃないです・・・タイミング的に2・8ですよ」

笑みを歪め舌打ちする智美に、強がりを言いながら千種は立ち上がる。

「はは・・・こちとら手を変え、品を変えってやってるのに、アンタってヤツは・・・」

半端呆れ顔で、千種のタフさに改めて驚愕する智美だったが、更に厳しい現実を突き付けられる。
それは計り知れない体力差・・・圧倒的な手数で押し捲り、これ以上ない一撃を放ちながらも、疲弊しているのは明らかに智美の方であり、千種にはまだ余力を残しているのが見て取れいたのだ。

「・・・ふぅ・・・(アタシも移籍する前から、真面目にやっとくんだったな・・・)」

智美は一つ溜息をつくと、苦笑いを浮かべながら千種を見据えた。

「でもさ・・・このままフツーに終わったんじゃつまんないじゃん!」

智美は自らを奮い立たせる様に叫ぶと、この勝負で初めて真正面から仕掛ける。

体力面での不安要素はもちろんの事、切り札を悉く耐え抜かれ、手の内を読まれつつある智美にとって、これ以上勝負を長引かせるのは愚策でしかなかったからだ。
自身が満足に動ける今この時。
ダメージから千種が鈍っている今この時。
今一度『会心の一撃』を放つ賭けに出るしかなかったのだ。

「そう来るなら!」

千種も智美に呼応し動き出す。
得意の投げ技を放とうと掴みかかるが、ダンスで磨き上げた独特のステップが的を絞らせない。

だが、智美とて永遠に千種の攻撃を避け続ける訳にはいかない。
智美は千種の僅かな隙を見逃すまいと、集中力を極限まで高め『その時』を待った。

「もうこれ以上は逃げられませんよ!」

智美をコーナーに追い詰めた千種は、千載一隅のチャンスとばかりに、高速タックルで智美に迫る。

「・・・掛かった!」

千種が最も低い姿勢となった瞬間にタイミングを合わせ、跳び箱の要領で絶妙にタックルをかわすと、またしても背後を奪う。
そして千種の腰周りを固め腰を落とすと、迷わずジャーマンスープレックスの体勢に入った。

本来は得意技である関節技を選択するのが定石だが、現時点の体力では耐え抜かれると判断していた智美は、乾坤一擲の勝負に賭けたのだ。

「このジャーマンに全てを・・・・・・なっ・・・に!?」

しかし智美の気合いを余所に、千種は微動だにしなかった。
彼女もまた重心を落とし、更に智美の腕をしっかりと掴んでいた。

「さすがに2回も投げられる訳にはいきませんからね!」

千種が言葉を発すると同時に智美の体が浮く。

「くっそ・・・うっ・・・あぁぁぁ――――がはぁッ!!!」

千種は智美を背負った状態のまま宙を半回転し、自らの体重を全て掛け押し潰す様に、激しくマットへと叩き付けた。
全身を強打した智美は、痛みに耐えかね右に左へと転げ回る。

素早く起き上がった千種は、智美の髪を掴み強引に引き起こす。

「次は・・・私の番です!!」

流れる様に智美の背後を奪い、今度は千種がジャーマンスープレックスの体勢に入った。
大きく脚を開き、深々と腰を落とし、技の威力を高めるべく溜めに溜める。

「・・・いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!」
「ッお・・・おあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――――――――ッぐぎゃぅ!!!!」

弾かれる様に放たれたジャーマンスープレックスは、美しい放物線を描いて轟音と共に、智美をマットへと突き刺した。

再起への架け橋

試合会場であったなら、賞賛の拍手で沸立つであろう剛と美を兼ね備えた完璧なジャーマンスープレックスホールドが、リングの中央で完成する
脱力しきった体を真っ二つに折られた智美は、これ以上ない大開脚を晒し、文字通り大輪の華を戦場に咲かせた。

「・・・あぁ・・・」

もがき苦しみながら求めていたスープレックスを放てた千種は、言葉を失っていた。
既に10秒の時を経ていたが、智美を放さず形成したブリッジを崩さない。
それは過去のトラウマから無意識に避けていたものが、自然に成し得た嬉しさからくるものだった。

「ぎ・・・いつつ・・・」
「・・・はっ・・・!?」

意識が戻った智美の呻き声に、千種は我に返り、跳ねる様にホールドを解く。

「あ、と・・・智美さん!」
「痛ッ・・・ホント・・・手加減ってモンを・・・知らないって言うか・・・」
「あの・・・す、すみません・・・」
「ってのは冗談・・・やれば出来るじゃん・・・ま、本当はアタシが勝って・・・言ってやりたかったんだけどね・・・」

慌てて駆け寄って来た千種に、智美は悪戯っぽい笑みを向ける。

「あは・・・そう言われると何だか複雑な気分です・・・」

この期に及んで強がる智美に、千種は思わず苦笑いする。

「・・・どう?・・・少しは吹っ切れた?」
「え・・・あ、はい・・・でも」

何気ない智美の一言に、千種は戸惑いの表情を見せながら小さく頷く。

「でも・・・今日の事は、最初に教えてもらった理由が、本当に全てなんですか?」

どうしても腑に落ちない千種は、改めて智美に問い質す。

「ん・・・まぁ半分はホントかなぁ・・・いつまでもイジケてたのは正直ムカついてたし、千種みたいに強いヤツとガチでやって、自分を試してみたいってのもあったね・・・」

その答えに黙然と頷く千種を上目遣いで見ながら、智美は言葉を繋いでいく。

「あと半分はさ・・・あそこまでやんないと本音ゲロしないでしょ・・・アンタ優しいから気ィ遣って、自分の中に仕舞い込んじゃうし・・・」

全ての答えを聞き終えると、千種は大きく目を見開き呆然となった。

「・・・・・・どうして・・・どうして私なんかの為に・・・こんな・・・」

目にいっぱいの涙を溜めて千種は更に問いかける。

「はは・・・そんなんアンタが仲間で、イイヤツだからに決まってるからじゃない」
「と・・・智美さ・・・」
「余計なお世話かもしれないけど、アタシみたいに後悔してほしくないしね。ま、アンタに偉そうに語れるほどのモンじゃないけど」

智美に嘘偽りない返答に、千種は涙を頬に伝わせる。

思えば一度頂点に立ってからと言うもの、今まで腫れ物に触れるかの様な扱いを受けてきた。
そして『あの日』以来、結果が伴わなくなると、周囲の人間から遠巻きに見られていた気がしていた。
本音をぶつける相手もなく、面と向かって意見してくる者も誰もいない。
言い知れぬ孤独感に苛まれていた千種にとって、遠慮なく本音でぶつかり、背中を押し奮い立たせてくれた智美に、感謝の気持ちでいっぱいになった。

「こらこら、泣かない、泣かない~。どっちかって言うと、何度も投げられて負けたアタシが泣く方じゃん」
「・・・ぷっ・・・あはっ・・・ははは・・・あはは」

両手で頭を抱えておどけた仕草を見せる智美に、千種は心の底からの笑顔を見せる。

「私・・・私、もう一度ここで頑張って恩返しがしたいです・・・智美さんや、私なんかを必要としてくれた社長の為にも・・・」
「またまた大袈裟なー。ま、社長にはキッチリ返してあげなよ。アタシも拾ってもらった恩がある分、社長が喜んでくれたらアタシも嬉しいしね」
「はい・・・必ず!」

そこには晴れ晴れとした表情で力強く誓う結城千種がいた。

『あの日』止まった歯車は『この日』を境に再び動き出す・・・・・・






ホライズンさん今回もありがとうございましたー。
しかし先輩仕様のナベトモもいいですな(´ω`)=3
      
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